2019年3月1日金曜日

かなりや

 「かなりや」は第3ステージの曲です。作詞は西條八十、作曲は成田為三(編曲は寺嶋陸也)で、日本で初めての童謡と言われています。歌詞はこちらをご覧ください。歌を忘れたかなりあは「すてましょか」、「うめましょか」、「ぶちましょか」と扱いが過激になってきます。ところが、4番でがらりと曲相も変わって、最後には「忘れた歌を思い出す」と終わります。

 これは、西條八十著『唄の自叙伝』によると、下記の心持があったようです。

 『「かなりや」の歌詞のモーティフは、幼い日誰かに伴(つ)れられて行った、たしか麹町の或る教会だったとおもう。そこのクリスマスの夜の光景(けしき)の回想から生まれた、年に一度の聖祭の夜、その会堂内の電燈はのこらず華やかに灯されていたが、その中にただ一個、ちょうどわたしの頭の真うえに在るのだけが、どういう故障か、ぽつんと消えていた。それが幼いわたしに、百禽(ももどり)がそろって楽しげに囀(さえず)っている中に、ただ一羽だけ囀ることを忘れた小鳥ー「唄を忘れたかなりや」のような印象を起させて哀(あわれ)に想えた。その遠い回想から偶然筆を起してこの童謡を書き進めるうちに、わたしはいつか自分自身がその「唄を忘れたかなりや」であるような感じがしみじみとしてきた。
 そうではないか? 詩人たらんと志して入学した大学の文学研究も、わたしは不幸な出来事から抛棄(ほうき)した。そうして、何よりもまず老母や弟妹の生活を確立するために、兜町通いをしたり、図書出版に従事したりしている。わたしはまさに歌を忘れたかなりやである』

 寺嶋陸也さん編曲の合唱は、YouTubeにはないので、小鳩くるみの歌を貼っておきます。

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